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生化学2021.03.16

Lipotype社ショットガンリピドミクス事例紹介;
多発性硬化症に対するバイオマーカー

Lipotype社ショットガンリピドミクスの事例紹介;
多発性硬化症(MULTIPLE SCLEROSIS, MS)に対するバイオマーカー

  • Lipotype社ショットガンリピドミクスについて(PDF)

  • [概要]
    多発性硬化症は、神経細胞にある脂質豊富なミエリンに損傷を与えます
    脂質プロファイルの変化は多発性硬化症の特徴です
    Lipotype社のリピドミクスにより、診断・治療モニタリングに対するバイオマーカーと成り得る脂質を特定しました

    多発性硬化症(MULTIPLE SCLEROSIS, MS)は中枢神経系の慢性の炎症性・神経変性疾患であり、脳と脊髄にあるミエリン(髄鞘)が自己免疫反応により自身の身体から攻撃を受けています。損傷したミエリンにより、中枢神経系とそれ以外の身体の間の伝達コミュニケーションに問題が生じます。今日まで、多発性硬化症(MS)の治療法は確立されていません。

    神経生物学の研究者の間では、多発性硬化症(MS)は我々が知る臨床症状を引き起こすだけでなく、患者の脂質代謝を変化させると考えられています。詳細な分子レベルでの脂質分析により、多発性硬化症(MS)に対する特異的なバイオマーカーの発見が可能で、これにより迅速かつ正確な診断、より良い治療、およびモニタリングに有用です。


    多発性硬化症(MS)はよく知られた中枢神経系の自己免疫疾患の1つです。この疾患と共に生活されている患者は約300万人おり、毎日推定300人が診断を受けています。 脂質と脂質代謝は、多発性硬化症において重要な役割を果たし、神経変性疾患の進行に直接的または間接的な影響を与えていると考えられています。まず、多発性硬化症(MS)おいて神経の保護層であるミエリンは主に脂質で構成されています。したがって、脂質代謝が正常に機能することは、ミエリンの再生(再ミエリン化)、修復、および再構築にとって重要です。一方、神経炎症での炎症反応の調節においても脂質は重要です。さらに、脂質代謝は中枢神経系の一般的な修復において重要な役割を有しています。

    パーキンソン病やアルツハイマー病などの他の神経変性疾患と同様に、脂質プロファイルの変化は多発性硬化症の病態の特徴と思われています。 多発性硬化症(MS)における脂質ホメオスタシスと脂質代謝の調節不全は、ミエリンの正常性に影響を及ぼし、神経変性を制御している可能性があります。

    多発性硬化症(MS)の症状・発症に関して、患者間で様々であるため、この疾患の早期発見が特に困難になっています。患者は診断を受けるために様々な検査を受ける必要があり、多くの場合、これは患者にとって長い苦痛となります。そのため、多発性硬化症(MS)に特異的な血液バイオマーカーを同定することは、患者の生活を改善する一助となります。

    ドイツ神経変性疾患センター(DZNE)の研究者は、このようなバイオマーカーを発見するために、双子のうち片方のみが形式上の多発性硬化症(MS)と診断された73例の一卵性双生児の血漿サンプルにリピドミクス分析を適用しました。また、243種の脂質が脂質データ分析の対象として検討されました。

    Altered lipid classes and species in monozygotic twins discordant for multiple sclerosis:
    A On lipid class level, PC O- (***) and PE O- (**) are significantly decreased in MS-twins (dark blue = healthy twin, light blue = MS-twin).
    B Number of significantly altered lipid species (dark green) as parts of the whole corresponding lipid class.
    Horst Penkert et al., Annals of Clinical and Translational Neurology (2020), doi: 10.1002/acn3.51216

    その結果、多発性硬化症(MS)の双子の片方(MS-twins)と健康な双子の片方との間で総脂質含有量に有意な差がないことが明らかになりました。 ただし、分子レベルでは、エーテルホスファチジルコリン脂質(ether phosphatidylcholine lipid , PC O-)およびエーテルホスファチジルエタノールアミン脂質(ether phosphatidylethanolamine lipid, PE O-)はMS-twinsで減少がみられました。 驚いたことに、その減少した脂質の上位は長鎖の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含むPC O-によって占められていました。

    リン脂質とエーテル型リン脂質:リン脂質は、リン酸基と2つの脂肪酸を含む脂質です。 エーテル型脂質では、2つの脂肪酸のうちの1つがエステル結合ではなく、エーテル結合によって結合されています。 上図に示されているのは、ホスファチジルコリンおよびエーテル型ホスファチジルコリンの例です。

    PCO-とPEO-はどちらもエーテルリン脂質であり、一般的なエステル結合ではなく、エーテル結合が脂肪酸をリン脂質に結合しています。エーテルリン脂質は、炎症と関連する脂質シグナル伝達において重要な役割を果たします。それらはアラキドン酸のような長鎖の多価不飽和脂肪酸(PUFA)が豊富です。 また、長鎖の多価不飽和脂肪酸(PUFA)の代謝産物であるエイコサノイドは、炎症における主要なシグナル伝達化合物です。

    さらに、これらのエーテル類は代謝および抗炎症機能を持つ遺伝子を制御する転写因子に結合することができます。したがって、MS-twinsのエーテル脂質とPUFAの減少は、多発性硬化症における脂質シグナル伝達の変化を示しています。

    73例のMS-twinsのうち、20例は多発性硬化症の治療を受けていませんでした。それでも、変化した脂質プロファイルは存続していました。これにより、PCO-およびPEO-の脂質レベルの変化が多発性硬化症(MS)治療ではなく、疾患自体に関連していることが確認されました。

    多発性硬化症(MS)は個人間において多様で、これにより疾患に関する経過の予見性が制限されます。そのため、簡単にアクセスできるバイオマーカーに対して満たされていないニーズがあり、これは疾患をよりよく理解し、診断と治療をサポートするのに役立ちます。

    多発性硬化症(MS)のバイオマーカーとして脂質と特異的な脂質プロファイルを同定することにより、神経炎症性および神経変性疾患に対する科学的かつ医学的治療に関する様々な機会を拡充します。信頼性の高い早期診断をサポートするだけでなく、疾患の進行状況や治療に対する患者の反応をモニタリングするのにも有用です。

    多発性硬化症やその他の神経炎症性および神経変性疾患に関連する脂質の重要性は著しいものがあります。Lipotype社の有するショットガンリピドミクスのテクノロジーは、神経生物学のアカデミア・企業・臨床の研究者に対して、詳細なリピドミクスプロファイルと共に特異的な脂質バイオマーカーを発見・同定する手段を提供します。

    <引用文献>
    Horst Penkert et al., Annals of Clinical and Translational Neurology (2020), doi: 10.1002/acn3.51216

    メーカーのページはこちらです:BIOMARKERS FOR MULTIPLE SCLEROSIS Research Article

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